読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

離れられない男女の怖さ 『浮雲』

「午前十時の映画祭」にて、成瀬巳喜男監督の『浮雲』を見て来ました。

東京物語』『七人の侍』と並ぶ、日本映画の至宝の一作。”最高画質の映像で見る機会が来るまで”待っていた作品でした。

1955(昭和30)年の東宝映画作品です。

【物語】

昭和21年。

敗戦とともにベトナムから帰国したゆき子(高峰秀子)は、かつて愛し合っていた技師の富岡(森雅之)に会いに東京へ出てきたが、妻子と別れると約束したはずの富岡にはいまだ妻子があった。失意のゆき子はアメリカ兵と付き合い始めるが長くは続かず、富岡も事業に行き詰まり、2人はよりを戻す。

その後も何度も破局・再会を続ける2人だったが、富岡に、屋久島の営林署での仕事の口が舞い込む。

…映画の舞台が、ベトナム→焼け跡の東京→伊香保温泉→鹿児島→屋久島…へと移り変わるとともに、主人公の2人の愛憎がともに増していく、怖い映画でした。

高峰秀子の、根っこに強い愛情を秘めた女が、外観とは裏腹に儚げで脆いのが怖いです。綺麗なだけに尚更…。欲望に正直な男・森雅之は酷い男ですが、最後の最後に本当の愛情に気付く。それが手遅れだと気付いて慟哭する後ろ姿に、男の哀しさがありました。

湿気や熱気が伝わってくるモノクロの映像が、4Kリマスターによって生々しく再現されているのも、特筆すべきことです。★★★★。

…この映画を見た直後、自宅のホームシアター市川崑監督の『女性に関する十二章』(1954)を見ました。この映画も、長きに渡る男女の恋愛を描いていますが、『浮雲』とは正反対のアプローチなのが面白い。軽妙は都会派コメディの秀作でした。★★★★。