読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新譜之雑談帖(その369)―ロヴロ・フォン・マタチッチ録音集成(9CD)

ロヴロ・フォン・マタチッチは、わたくしがクラシック音楽を聴く様になった高校生当時、NHK交響楽団の招きで度々来日し、N響との実況録音がNHK−FMや、教育テレビで良く流れていた様に記憶しています。只、当時のわたくしはN響の音が左程好きではなく(今でも日本のオーケストラの音色は、特に泰西名曲を奏でる場合には、どうも好きになれないのでありますが)、余り熱心な聴き手とは申せませんでした。

わたくしにとりまして、マタチッチの名前は、チェコ・フィルと録音したブルックナーの第七交響曲の演奏と深く結び付いておりまして。恐らくわたくしと同年代のブルックナー愛好家は、故宇野功芳氏の論評の影響を受けずにはいられなかったろう、と思います。その宇野氏が、第五・第七交響曲の名盤として挙げていたのが、シューリヒト/ハーグ・フィルとマタチッチ/チェコ・フィルの音盤。シューリヒトのLPは、当時国内盤では入手困難でしたので(確か廃盤の時代が長く続いたと記憶しています)、マタチッチ/チェコ・フィル盤が殆ど唯一の存在(所謂『宇野教』信者にとりまして)。

マタチッチ/チェコ・フィルのレコードは、2枚組で4,600円と結構高くて、入手するには大分乏しい小遣いを必死になって貯めて購入した記憶が(少し後になって、LP1枚に収めたレコードも出ましたが、楽章の途中で盤面をひっくり返すのが嫌だったわたくしは、2枚組を購入したのでありました)。このマタチッチの演奏は、わたくしに取りましてブルックナーの第七交響曲の刷り込み盤でありまして、随分長く絶対的存在でありました。

さて、前置きが長くなりましたが、ステレオ初期時代のマタチッチの録音が、某ヴェニアスから纏められて発売される、との告知が。某ヴェニアスは、何十枚もの組み物を連続して出した後、箸休めではありませんが数枚規模の組み物を出す傾向にある様で。少し前には、コンドラシンの小ぶりの録音集成を出しましたが、マタチッチの録音集成も、それに倣ったものの様な。

わたくしはマタチッチの骨太な演奏が好きなので、テスタメントから出た露西亜物の録音集(幾つかの曲目は今回のヴェニアスとダブっている様ですが)、実況録音で出たブルックナーの第九交響曲チェコ・フィルとのベートーヴェンの第三交響曲『英雄』と云った所は既に蔵して居りますので(モノラル録音のブルックナーの第四交響曲も)、敢えてこのヴェニアス盤を購入する予定はないのでありますが、入手の難しい録音も含まれているので、そうして点では価値が高いのではないか、と思います。

それにしてもマタチッチは、余り録音運に恵まれてはいなかった様で。一つには巷間言われている様に、世渡りが下手だった部分もあったかも知れません。同じ思いを抱く人は少なくない様で、没後それなりの年数が経過していますが、あれこれ録音が断続的に発掘されている様で。只、惜しいかな、力量的には一流とは言い難いオーケストラとの物も少なくない様で。その点は惜しいですね。