永年のもやもやがすっきり 〜久しぶりの長い自分語り〜

 ずっと気になっている腕時計があった。

メーカーも型番もわからない、知っているのは機能と見た目だけ。

昔まだ会社勤めをしていた時、職場の先輩がはめていた腕時計だ。

 その腕時計はデジタル表示が一切無くて、針が回るアナログ時計なのにアラーム機能がついていた。文字盤の周囲のベゼルを回転させていくつもの機能を切り替える、ちょっと変わった操作方法が印象的だった。

ベゼルをアラームに合わせると複数の針がするすると回転してアラーム時刻を表示する。ストップウォッチもついていて、ベゼルを合わせるとすべての針が12時位置に移動してアナログストップウォッチのようになる。

精密機械然としたその動作がなんともかっこよく見えた。

職場の上長がその先輩について『あいつは高いものを買うけど長く大事に使う』と言っていたこともあって、その時計がとても高価で自分には手の届かないものだと思い、欲しいとまでは思わなかったが印象には強く残った。

 その後何年か経ってフリーでの仕事が順調になってきた頃、ちょっとまとまった入金があったので見栄えのする腕時計を買うことにした。

かといって興味のない分野なので何を買っていいかわからない。そこで以前の会社の先輩の腕時計と同じものを探すことにした。

 メーカーは確か国産だったから、きっとセイコーシチズン、カシオのどれかだろう。

その腕時計を見せてもらった時、電卓と同じメーカーなんだと思った覚えがあるのでカシオ製だとアタリをつけて方々の店を探した....が、見つからない。

腕時計に詳しいという店員にきいてもわからないという。そもそも国産時計はよほどの高級品でもない限り同じモデルを何年も売り続けることは無いらしい。

当時の職場で見せてもらった腕時計は使い込まれたもので、少なくとも買ったばかりの新品ではなかった。しかもあれから何年も経っているから、あの時計が発売されてからすでに10年近く過ぎているかもしれない。もしそうならくら販売店を探しても見つからないだろう。

 何年も店頭に並ぶような高級品なら買えないし、高級品でなければ既に店頭には無いので、諦めて他の腕時計を探した。ただ、アナログ式のアラーム付きにだけはなぜかこだわった。

 それから少ししてようやく気に入った時計が見つかった。アナログ式でアラーム付き、気圧高度計と気圧偏差計もついたやたら針が多い時計だ。与圧の無い小型飛行機に乗ることが多いので気圧高度計があると面白いかもしれないし、外仕事が多いので天候の予測ができる気圧偏差計は便利そうだ、、、、そんな理由で10万円以上もする腕時計を買ってしまった。

 それ以来、腕時計はこれ一本だけ。2回のオーバーホールと大修理を1回、細かな修理を2回ほど経て20年以上使っている。あの先輩の腕時計は覚えているけど、いまさら探してもしょうがない。ただ、似たような腕時計を見かけるとつい目で追ってしまう癖がついた。

 最近、長年使ってきたバンドの傷みが目立ってきた。時計本体とバンドをつなぐばね棒が折れ、バックルのロック機構が壊れ、とうとうバックル自体が壊れてしまった。細かな部品はその都度交換できたが、バックルはメーカーから送ってもらうしか無い。ちょっと特殊なバックルなので汎用品は使えないらしい。バンドそのものを交換することも考えたが、本体側の造りが変わっていて汎用品が合わないんだそうだ。バンドまで専用品だったとは思わなかった。どうやら春の連休が終わるまでどうにもならない様だ。

 連休中にも仕事があるし、外出時に腕時計がないのはどうも落ち着かない。一本くらいスペアの腕時計を持っておこうかと考えていたら、ふとあの先輩の腕時計を思い出した。

高価なものなら無理してまで買おうとは思わないけど、昔に比べれば安価な中古品を探すのは容易い。どっちにしろもう新品は手に入らないだろう。スペアだし中古で構わない。

 ただあの腕時計を探すにしても、やっぱりメーカーも型番もわからない。詳しそうなサイトを見たりそれっぽい語句を並べて検索したり、果てはオークションサイトを虱潰しに探してみたけど見つからない。記憶の中だけの映像は検索の役には立たなかった。

 質問すると該当する知識を持つ人が教えてくれる便利なサイトがあったのを思い出した。知恵袋とか人力検索とかそういうサイトだ。メーカーや型番そのものがわからなくても、手がかりが増えれば助かるかもしれないと三つのサイトに質問をアップしてみた。

 三つのうち二つは閲覧数が伸びるばかりで反応がないが、残りひとつのサイト『Yahoo知恵袋』でさっそく回答者が現れた。でもせっかく教えていただいた情報だったが提示した内容に合わず、どうやらメーカーがセイコー以外には考えられないということだだけがわかった。1日経って次の回答者が現れ、いきなり記憶通りの時計の画像を見せてくれた。どの世界にも詳しい方がいるもので、そういった方が力を貸してくださるのはありがたいことだ。

 いただいた回答によると、件の腕時計はやはりセイコー製でアルバシリーズのひとつなんだそうだ。カシオじゃなかった。記憶なんていい加減なものだ。これで型番もわかり、永年のもやもやがすっきりした。

 後発のカシオが格安路線でシェアの伸ばし、それに対抗するためにセイコーが出したのがALBAブランドだ。SEIKOブランドを安いイメージにするわけにはいかないからセカンドラインに分けたのだろう。シチズンならWIREDが同じポジションになる。

 ALBAだったら当時買えたのかな? とりあえずオークションで探してみよう。いくつか派生のモデルや後継機種もあったようだけど、今はもうその経脈は残っていない様だ。どうせなら全く同じモデルにしよう。今現在は出品されてないみたいだけど、網を張って待っていればそのうち見つかるだろう。連休中には間に合わないけどまあいいか。